学会運営システムを検討する際のポイント~スクラッチとパッケージとは?~
投稿日
2025/05/14
カテゴリ
IT一般

こんにちは。編集長の堀田です。
現代の学会運営において、ITシステムの活用は欠かせません。
会員情報の管理、学術大会の演題登録・参加登録、ジャーナルの投稿審査など、さまざまな業務をスムーズに行うためには、自学会に適したシステムの導入が大きなカギを握ります。
とはいえ、「どんなシステムを選べばよいのか」「自分たちに本当に必要な機能とは何か」など、導入にあたって悩む方が多いのも事実です。本記事では、学会事務局の方々からよく伺うお悩みを出発点に、「スクラッチ開発」と「パッケージサービス」という2つの選択肢について解説していきます。
1. 学会運営のシステム導入におけるよくあるお悩み2. スクラッチ開発とは?スクラッチ開発でよく聞く失敗要件が膨らんで費用も時間も想定以上にかかってしまった学会業務に精通していない業者に委託してしまった3. パッケージサービスとは?パッケージサービスでよく聞く失敗学会の業務フローをそのままパッケージに当てはめようとしてしまったサポートの重要性を軽視してしまった4. スクラッチとパッケージはどちらがいいの?5. さいごに
1. 学会運営のシステム導入におけるよくあるお悩み
日々弊社が様々な学会様からお問い合わせをいただく中で、以下のようなお悩みをよく伺います。
よくあるお悩み
- 既存システムが老朽化しており、見直しが必要
- 導入しているサービスの機能やサポートに不満がある
- ITに強い先生がシステムを自作したが、引退してしまい保守できなくなってしまった
- Excelや紙、メールなどを駆使して管理しており、限界を感じている
これらのお悩みに対して、アンサーは大きく2つあります。
それが「スクラッチ開発」と「パッケージサービス」です。
2. スクラッチ開発とは?
スクラッチ開発とは、一からオーダーメイドでシステムを開発する手法です。
学会独自の業務やルールがある場合、その要件に合わせて自由に機能を作りこめる点が大きな魅力です。
一方で、自由度が高い分、開発に時間とコストがかかるのが難点です。また、初期費用が高い代わりにランニング費用は抑えられると思われがちですが、仕様変更や拡張、脆弱性などのセキュリティ対応のたびに改修が必要となるため、継続的な予算確保も必要です。
「他に似たシステムがない」「予算をかけてでも100点になるべく近いシステムを目指したい」といった強いニーズがある場合は、有力な選択肢となるでしょう。
スクラッチ開発でよく聞く失敗
スクラッチ開発を選択した学会様からよく聞かれる失敗には以下のようなものがあります。
要件が膨らんで費用も時間も想定以上にかかってしまった
スクラッチ開発は学会の要件に沿った機能を自由に盛り込むことができるものの、そもそも要件を正確に定義し、システムに最適な形で落とし込むのは非常に難易度が高く、手間もかかる作業です。
結果として、開発を進めながら要件がどんどん膨らみ、費用も時間も、そして手間も想像以上にかかってしまったということが起こります。
学会業務に精通していない業者に委託してしまった
学会業務に精通していない業者に開発を委託してしまうと、せっかく費用をかけて作ったシステムが使いづらいものになってしまうことがあります。
学会運営は一般的な業務システムとは異なる独特の業務フローがあるため、いくらこちらから要件を提示するスクラッチ開発と言えど、学会業務に詳しくない業者に委託することはリスクの高い選択です。
最悪の場合、せっかく開発したシステムを使わずに破棄することになったというケースもあるため、委託する業者の見極めや、実務担当者が要件定義の段階でどれだけ積極的に関与していけるかどうかがスクラッチ開発成功のカギを握ります。
3. パッケージサービスとは?
パッケージサービスとは、あらかじめ汎用的な機能が整っており、設定やカスタマイズによって自学会に合わせて運用できる仕組みです。アトラスが提供している「Confit」や「SMOOSY」、「Editorial Manager」もパッケージサービスにあたります。
特徴としては、導入までのスピードが早く、コストも抑えられる点が挙げられます。
ちょうど、オーダーメイドではなく既製品のスーツを買うようなイメージで考えていただけると、スピードとコストのメリットが理解しやすいかと思います。
また、どんなパッケージサービスを導入するかにも依りますが、システムが老朽化しないための保守対応や、時代に合わせた機能開発がサービス提供者によって随時行われる点もパッケージのメリットです。
一方で、スクラッチ開発と違い、システムでできることがあらかじめ決まっているため、学会の要件をすべて実現できるとは限りません。
パッケージサービスでよく聞く失敗
パッケージサービスを選択した学会様からよく聞かれる失敗には以下のようなものがあります。
学会の業務フローをそのままパッケージに当てはめようとしてしまった
学会に限らず、様々な業務フローというのは、理由があって独自化されているものもあれば、特に理由が無く独自の進化を遂げてしまったようなものもあります。
パッケージサービスを導入するのであれば、今までのやり方を無理に踏襲しようとするのではなく、システムに合わせて柔軟に業務フローを変えるという姿勢も大切です。
無理やり踏襲しようとしてしまうと、「要件に合うサービスが無い」となってしまったり、「この作業はシステムで対応できないからシステム外で対応しよう」ということが増えていき、せっかく導入したパッケージサービスを最大限活用できなくなってしまいます。
サポートの重要性を軽視してしまった
パッケージサービスの導入にあたっては、システムだけでなくサポートの質も大切です。
サポートの位置付けとしては利用方法の問い合わせ対応だけではなく、パッケージサービスの機能を最大限に活かした運用提案も重要な要素となります。
システムでできることは念入りに確認して導入したものの、サポートのレスポンスが悪い、導入後のフォローが無いなどの不満から乗り換えを検討される学会様も一定数いらっしゃるため、導入にあたっては意識したほうが良いでしょう。
4. スクラッチとパッケージはどちらがいいの?
アトラスは学会向けのパッケージサービスを提供している会社ですので、パッケージをおすすめしたいところではありますが、こればかりは学会様の要件によって異なります。
パッケージサービスの場合、要件に合わないまま無理に導入してしまうとお互いにとって不幸な結果となってしまうため、弊社にお問い合わせいただいたお客様にも最終的にスクラッチ開発をおすすめすることもあります。
ですが、例えば既製品でぴったり合うスーツがあるのに、わざわざオーダーメイドでスーツを作るのはもったいないですよね。それと同じで、パッケージサービスで学会様の要件が満たせるのであれば、コストや導入までの手間、スピードなど様々な面でメリットのほうが大きいはずです。
そのため、順番としては、まずはパッケージでどこまでできるかを調査し、どうしてもパッケージでは要件を満たせないという場合にスクラッチ開発を検討することをおすすめします。
また、先述のとおり、パッケージの導入に際しては既存の業務フローにとらわれないことが大切です。パッケージサービスを調査する際は、現状のフローに合わないところがあっても「フローをこのように変えれば対応できそうだ」という視点で見ることをおすすめします。
5. さいごに
最後に、スクラッチ開発とパッケージサービスの違いを表にまとめます。
スクラッチ開発 | パッケージサービス | |
---|---|---|
概要 | クライアントの要件に合わせて1からシステムを開発する手法 | あらかじめ汎用的な機能を実装したうえで既製品として販売・利用されているシステム |
自由度 | 要件に合わせて開発を行うため、自由度が高い。 | パッケージとして備わっている機能の範囲で利用することが前提となるため、自由度は低い。 設定によってどの程度柔軟にカスタマイズできるかを確認することが大切になる。 |
費用 | パッケージと比較すると費用は高くなりやすい。 | 既製品を利用する分、費用は抑えられる。 |
導入担当者の手間 | 要件を洗い出し、仕様を確定させるまでに労力がかかる傾向にある。 | 要件定義や仕様検討の労力は少ないが、パッケージの導入に合わせた業務フローの見直しが必要。 |
導入までのスピード | 1からシステムを開発するため時間がかかる。また、要件が膨らむことでスケジュールの遅延が起こりやすい。 | 既製品のためスピーディーな導入が可能。 |
学会運営は多くのステークホルダーが関わる、繊細で複雑な業務が多いです。だからこそ、導入するシステムによって業務効率や関係者とのコミュニケーションが大きく変わってきます。
アトラスでは、年間600以上の学会様と関わる中で培ってきた知見を活かし、学会に合ったシステム選びをお手伝いしております。
弊社が直接提供できるのはパッケージサービスのみですが、必要に応じて学会システムのスクラッチ開発に強みがある会社様を紹介することも可能です。
昨今ではパッケージサービスを中心に検討いただき、不足する部分は個別にスクラッチ開発をする、といった”ハイブリッド方式”も多く採用されています。
システム導入でお困りの際はぜひお気軽にご相談ください。
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