DOI削除・変更・取り下げをしたいときはどうする?DOI登録機関(RA)ごとに異なるポリシーをご紹介!

本記事はAtlas Journal Caféに2024/7/31に投稿した記事の内容を一部改訂して再公開したものです。
 
こんにちは。ジャーナルサポート担当の朴です。
 
さて、今回はDOIについてお話ししようと思います。もし「DOIってなに?」「DOI登録機関(RA)って?」と思う方は、先に以下のページをご確認ください。
(DOIを「ドイ」と読んでいるそこのあなた!正しくは「ディーオーアイ」です!!)
 
まずは、問題です。
DOIは永続的識別子(PID)の一つですが、一度登録したDOIを削除することや、DOIの文字列を変更することはできるのでしょうか?
 
正解は、、、、「できません!」
 
具体的には、既に有効化※されたDOIを削除・変更することはできません。
※DOIがハンドルシステム(DOI等の永続的識別子システムで使用される基盤技術)に登録され、URLとして機能する状態を言います。
 
このため、DOIを登録する際は十分に注意する必要がありますが、思い通りに行かないのが人生です。作業者の登録ミスや、出版社や学会の事情による変更、論文の取り下げなど、何らかの理由でDOIを削除・変更しないといけない状況にあうかもしれません。
 
それでは、そのような状況に直面した場合はどうすればよいでしょうか?
この記事では学術関連でよく知られている3つのRA(Crossef、DataCite、JaLC)のDOI削除・変更・取り下げのポリシーについて調べたことをまとめました。
 

DOIの削除・変更・取り下げに対するポリシー

Crossref

Crossrefの場合、Changing or deleting DOIsに詳細が記載されており、大きく2つに分けて対策を紹介しています。

登録したDOIが出版(公開)したDOIと一致しない場合

例えば、実際に登録したDOIとは異なるDOIを出版物に記載してしまった場合などです。印刷物などに誤ったDOIが記載されていた場合、すでに流通している印刷物を後から修正することは困難です。
この場合は、以下の対応を行うことになります。
📝
Crossrefで登録したDOIが出版(公開)したDOIと一致しない場合の対応
1. 正しいDOIを登録する
2. 誤ったDOIを正しいDOIにエイリアス(※)する(またはCrossrefサポートに依頼する)
※誤ったDOIでアクセスしても正しいDOIにリダイレクトさせる設定をエイリアス設定と言います。エイリアス設定の詳細はこちらを参照してください。
 
既に誤ったDOIが世の中に公開されているので、上記のような対応を行っていると思われますね。

間違ってDOIを登録した場合

例えば、DOIを登録すべきではないコンテンツにDOIを登録した場合や、Aコンテンツに登録すべきDOIをBコンテンツに登録した場合などがあります。後者の場合、以下のようにDOI名に意味を付与した場合に発生します。
DOIの例)10.nnnnnnn/Ajournal.10.1
※上記のDOIは「A」ジャーナルの10巻の1ページで始まる論文を意味します。
DOIがまだ「配布(公開)されていない」または「リンクに使用されていない」状態の場合、Crossref側でDOIを削除されたDOIページにランディングさせることができます。また、DOIがメタデータで識別されないようにするため、既存のメタデータを変更します。
DOI登録済みコンテンツを撤回または取り下げることになった場合は、DOIのランディングページでその旨が確認できるように対応する必要があります。

DataCite

DataCiteの場合、先にDataCiteの「DOI状態」について知っておく必要があります。DataCiteはDOIを3つの状態(Draft、Registered、Findable)で設定可能であり、各状態を簡単にまとめると、以下の通りです。
  • Draft:DOIが有効化されていないが、メンバーAPIで検索される。
  • Registered:DOIが有効化されている。メンバーAPIでは検索されるが、DataCiteの公開サービス(DataCite Commons、パブリックAPI)では検索されない。
  • Findable:DOIが有効化されている。DataCiteの全てのサービスで検索される。
表にまとめると以下のようになります。
DraftRegisteredFindable
DOIの有効化状態
DataCite Commons(※1)及びパブリックAPI(※2)の対象有無
メンバーAPIの対象有無
※1 DataCite CommonsはDataCiteが提供するコンテンツ検索サービスです。
※2 パブリックAPIとメンバーAPIの違いについてはMember vs. Public APIをご確認ください。
 
それでは、DataCiteのポリシーについて説明します。
DataCiteの場合、こちらのページに詳細が記載されており、DOIを間違った場合やコンテンツを撤回した場合は、以下の対応を行うことになります。
📝
DataCiteでDOIを間違った場合やコンテンツを撤回した場合の対応
  1. DOIの状態をFindable状態からRegistered状態に変更する。これは、DOIが DataCite CommonsやパブリックAPIで検索されないことを意味する。登録されたDOIは引き続き有効化される。
  1. DOIのURLを墓標ページ(Tombstone Page)に変更する。墓標ページは、機関独自の墓標ページでも、一般的な墓標ページでもよい。
つまり、まず検索対象となるAPIを制限し、そのうえでDOIのランディングページでコンテンツの状況が確認できるように(=墓標ページ)対応する必要があるとのことです。
墓標ページは、墓標ページのベストプラクティスを参考にして機関が準備・設定する必要があります。

JaLC

JaLCはFAQに関連内容が記載されています。
以下はJaLC FAQから抜粋した内容です。
DOIはその性質上、一度登録・有効化されたDOIを削除することはできません。
しかし様々な事情で登録した学術コンテンツに対応するDOIを無効にしたい場合があるかと思います。
対応としては、ランディングページの内容で、DOIが有効ではない旨を伝える方法(墓標化)があります。
つまり、DOIが削除できないため、ランディングページ上でこのDOIが無効になったことをお知らせすることです。
この場合、ランディングページにて、このDOIに紐付いたコンテンツがどのようなもので、なぜ使えなくなったのかを伝えることもできます。
例えば、論文が取り下げられた場合などで、取り下げられたことを伝えるなどが考えられます。

まとめると?

各RAのポリシーを2つのケースに分けてまとめました。
CrossrefDataCiteJaLC
DOI誤登録ケースによって異なる。 ケース1)登録したDOIが出版(公開)したDOIと一致しない場合 :エイリアス設定する ケース2)DOIがまだ配布(公開)されていない、またはリンクに使用されていない場合 :Crossref側でDOIを削除されたDOIページにランディングさせ、メタデータを変更する以下の対応を行う。 ・DOIの状態をFindable状態からRegistered状態に変更する ・DOIのURLを墓標ページに変更するDOIのランディングページにDOIが無効になった旨を明記する
撤回・取り下げDOIのランディングページにDOIを登録したコンテンツが撤回・取り下げになった旨を明記する同上同上

おわりに

3つのRAのDOI削除・変更・取り下げのポリシーについて調べてみましたが、いかがでしたか?RAごとに対応方法が少し異なりますが、基本的にDOIを登録した機関が何か対応しないといけないのは同じです。
基本的にDOIは、DOIを登録した機関が管理するものですので、DOIの管理について考える機会になっていれば幸いです。
それでは皆さん、良いDOI(ディーオーアイ)ライフを!

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